億劫な「やろうかな」を「すぐやる」に変える準備習慣
忙しい日々に「やろうかな」の壁はありませんか
毎日が慌ただしく過ぎていく中で、「これをやってみようかな」「あれに取り組んでみたいな」と頭では思っても、なかなか行動に移せないことは少なくありません。特に疲れている時や時間がない時は、始めるまでの準備や、最初の一歩を踏み出すこと自体が億劫に感じてしまいがちです。
「いざ始めようとすると、あれを取りに行って、これを準備して…と考えているうちに、もういいかとなってしまう」「やる気が出た時に限って、必要なものが見つからない」。そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。完璧に整った状態で始めようとすると、かえってハードルが高くなってしまうこともあります。
この記事では、そんな忙しい日々を送る方に向けて、「何かを始める」という行動そのものではなく、その手前にある「始めるための準備」を小さく習慣にするという考え方をご提案します。準備を習慣にすることで、いざ「やろうかな」と思った時に、すっと行動に移せるようになり、物事が驚くほどスムーズに進み始めることがあります。
なぜ「準備習慣」が有効なのでしょう
新しい習慣を身につけようとする時、私たちは「〇〇をする」という最終的な行動自体に意識を向けがちです。例えば、「毎日15分運動する」「寝る前に10分読書する」といった目標です。しかし、この「〇〇をする」という行動の裏には、そのための準備が必ず存在します。運動なら着替える、マットを敷く、読書なら本を用意する、飲み物を用意するなどです。
この「準備」の部分が、実は行動開始の大きな壁になっていることがあります。特に、疲れている時や気分が乗らない時は、この準備段階でエネルギーを使い果たしてしまい、「やっぱり今日はやめておこう」となりやすいのです。
そこで、「完璧に〇〇をする」という大きな目標から、まずは「〇〇をするための準備だけをする」という極小ステップに焦点を当ててみます。そして、この「準備」を毎日のルーティンに組み込んでしまうのです。
「準備だけなら1分でできるかも」「疲れていても、これだけなら負担がない」。そう思えるくらいの小さな準備を習慣にすることで、不思議と「ここまで準備したから、ついでに少しだけやってみようかな」という気持ちになりやすくなります。億劫だった「やろうかな」が、自然な流れで「すぐやる」へと変化していくきっかけが生まれるのです。
忙しい人のための「準備習慣」アイデア集
ここでは、忙しい方でも無理なく取り入れられる、いくつかの「準備習慣」のアイデアをご紹介します。ご自身の生活や取り組みたいことに合わせて、試しやすいものを選んでみてください。
1. 「まず、これを取り出す」習慣
これは、始めたい活動に使う最も重要なアイテムを、いつでもすぐに手に取れる状態にしておく、あるいは、決まった時間にそこへ持っていく、という習慣です。
- 例:
- 朝起きたら、ヨガマットをリビングの隅に敷いておく。
- 仕事から帰ったら、トレーニングウェアをベッドの上に置いておく。
- 夕食後、読みたい本とペンをテーブルの上にセットしておく。
- 描きたいと思っているノートとペンを、いつも座る椅子の横に置いておく。
「敷く」「置く」「セットする」といった単純な行動を習慣にすることで、いざ「やろうかな」と思った時に、「えっと、あれはどこにしまったかな…」と探す手間や、「準備が面倒だな」という気持ちがぐっと減ります。準備が目の前にあるだけで、行動へのハードルは大きく下がります。
2. 「関連するものを一箇所にまとめる」習慣
活動に必要なものをまとめて管理する習慣です。始める度に家中から探し回る手間を省き、スムーズなスタートを可能にします。
- 例:
- 編み物セット(毛糸、針、ハサミなど)を専用のカゴやバッグにまとめておく。
- 日記や手帳、関連するペンやシールなどを一つのポーチに収納しておく。
- 簡単な筋トレに使うチューブや軽いダンベルを、すぐに手に取れる場所に置いておく。
- 勉強道具(テキスト、ノート、筆記用具)を一つのボックスにまとめておく。
使うものがいつも決まった場所にある状態を保つことを習慣にします。使い終わったら「元の場所に戻す」までをセットにすると、次に始めたい時にすぐに取りかかれます。「どこに何があるか分からない」という状態を防ぐことが、始める前のストレスを減らすことにつながります。
3. 「終わりの合図を決めておく」準備
これは少し視点を変えた「準備」ですが、「いつ、どのように終わるか」を事前に決めておくことも、安心して始めるための大切な準備です。終わりが見えないと、始めるのが億劫になることがあります。
- 例:
- 「〇分だけやる」と決めて、タイマーをセットしておく。
- 「この1ページだけ読む」と決めて、ページに付箋を貼っておく。
- 「今日の運動はこれだけ」と、やる内容を一つに絞っておく。
「終わり」を明確にしておくことで、「長時間拘束されるのではないか」という漠然とした不安が軽減されます。「これだけやれば終わり」という安心感が、始める勇気を与えてくれることがあります。これも、始める前に「今日の目標(終わり方)」を決めるという準備習慣と言えます。
「準備習慣」を続けるための心の持ち方
「準備習慣」も、最初は続かない日があるかもしれません。それでも大丈夫です。完璧を目指さず、ゆるく続けることが大切です。
- 「準備だけ」でも十分成功:もし、準備だけしてその先の行動ができなかった日があっても、自分を責めないでください。「準備ができただけでも素晴らしい!」と、その小さな一歩を肯定的に捉えましょう。準備できたという事実が、次の日以降の行動につながるエネルギーになります。
- ハードルは極限まで下げる:最初のうちは、「マットの端っこをちょっと出すだけ」「カゴの中をちらっと見るだけ」くらいのレベルでも構いません。できる限りハードルを下げて、「これなら絶対にできる」と思えることから始めてみましょう。
- 楽しむ工夫を取り入れる:準備する場所を心地よく整えたり、好きな音楽をかけながら準備したりと、少しでも楽しい要素を取り入れると続けやすくなります。
- 失敗しても気にしない:準備習慣を忘れてしまったり、できなかったりしても落ち込まないでください。「まあ、そういう日もあるよね」と軽く受け流し、次の日からまた再開すれば良いのです。
小さな準備が、心地よい変化につながる
「準備習慣」は、それ自体が何かの成果を生むわけではないかもしれません。しかし、この小さな習慣は、「始められない」という停滞感から解放され、「いつでも始められる」という軽やかな気持ちへと導いてくれます。
準備を習慣にすることで、「やろうかな」と思った時にすぐに取りかかれる自分になれた、探し物をする時間が減った、始めることへの億劫さが軽減された、といった小さな成功体験を積み重ねることができます。これらの小さな成功はやがて自信につながり、自己肯定感を高めることにも繋がります。
日々の忙しさの中で、何か新しいことを始めたい、でも大きな変化は難しいと感じているなら、まずは「始めるための準備」という、ごく小さな一歩から試してみてはいかがでしょうか。このささやかな準備習慣が、あなたの毎日を少しずつ、そして確実に、より心地よいものへと変えてくれるはずです。
完璧でなくても大丈夫。あなたにとっての「これならできそう」という準備を一つ見つけて、今日からそっと始めてみませんか。